布留川 勝の人材育成の現場日記

G研報告(151回)後編「 相手の誤解を最小限に抑え、予想外の反応に対応するコミュニケーション力を強化するには?」

2017/07/26

グローバル人材育成研究会(G研)

コミュニケーション

第二部では、当社パートナー講師であるファリザ講師が登壇した。「日本人が海外でも成功するための異文化協働のカギ」を理解いただくために、たくさんのロールプレイを体験いただいた。

ファリザ講師が作ったロールプレイは、海外赴任経験のある日本人マネージャー200人、及び、日本人と何らかの協働経験がある外国人ビジネスパーソン500人の計700人にインタビュー調査をし、その結果から得た失敗事例や成功事例を基に作られている。そのため、とてもリアルな内容である。

例えば今回実施したケースの中で、「品質問題発生時の対応」というものがあった。
ある東アジアにあるベンダーに試験的にプログラミング工程を発注したが、一部の工程で発生する手戻り割合が許容水準を超えており、調査・報告を頼んだにも関わらず返ってきた報告書は明確な原因追及が行われていない。このケースに対して、東アジアベンダーの「品質」に対しての考え方をまとめることと、再検討の依頼をするのであれば、どのようにするか?という内容をご参加いただいた人事部の皆さまに考えていただいた。

このケースに関して、ファリザ講師は、2つのポイントで解説されていた。

1.期限や価格内に収めるという考え方の違い
今まで色々な海外のベンダー特に今回のケースのように東アジアのビジネスパーソンにもファリザ講師は何人にもインタビューした経験があるが、その時返ってきた返答で多かったのは、「私たち(東アジアのベンダー)も、見積もりの金額も期限も、それ以内に終わらないことは初めから実はわかっている。ただ、せっかく日本企業からこんな話がきたので、「ノー」とは絶対に言えない。そんなことをするとすぐに他のベンダーに取られてしまう。そのため受けるしかない。ただ、日本企業は求めてくるクオリティーは高すぎる。別途、それに対して対価があるならまだしも納期は短く、価格も抑えて、そこにクオリティーについて細かくいつも言われるため本当に大変である。実際のところ金額も期限も当初の提示内に終わらなかったとしても、その都度日本側とのミーティングで交渉をしながら微調整していこうというマインドでいつもやっている。」
日本では、クオリティーの重要さは当然前提条件にあり、そこに納期を守ること、価格も提示内でおさめることは「当たり前である」思っていることが多い。ただ、ここではその「当たり前」は通用しない。異文化理解で重要なのは、相手の「通常」は一体何なのか?早い段階で理解することだ。

2.はっきりと契約書に必要項目を記載する重要さ
今回のケースの場合、ベンダーの提出してきた報告書は正直全く明確な原因が書かれていなかった。
それはなぜか?そこに彼らは、報告書を提出する「価値」を見出さなかったからである。
「別料金が発生するなら報告書を作成するが、既にこんなにも忙しく納期も迫っている中で、なぜやらないといけないのか?」というのが、彼らの考え方である。
もし今回のように別途報告書作成が必要であれば、その旨は先に契約書に記載しておく必要がある。そして、報告書作成料は1ついくらであり、どのくらいの量と質を求めているかも明確に記載する必要がある。そうしないと、実際2行~3行で送ってくるというケースもあるという。
または、実際にこのように書いてほしいという報告書のフォーマットを先に渡し、サンプルも書いて「これが私たちが求めている完成版である」として送っておくと相手側もイメージがつきやすい。そして、細かな項目の記載が必要である場合は、「こういう理由があるため、この項目に対する詳細説明が必要である」と、相手の一歩先を行き、記載しておくことで余分なミスコミュニケーションも防げる。
また、プロジェクトをスムーズに進めるためには相手のモチベーションを上げることも重要だ。常にbig pictureを見せ、「このようにフォーマットを使って今後も報告をしてくれると非常に分かりやすくこちらも一緒に仕事がしやすいため、将来的に他のプロジェクトも頼む可能性がある」ということをいつもちらつかせ、こちらも上手く相手を動かしていくことが大切である。

異文化間で仕事をすることは、もちろん容易ではない。ただ、ファリザ講師のような実践的なロールプレイを通して、事前に相手の誤解を最小限に抑え、予想外の反応に対応するコミュニケーション力を強化する異文化対応力は鍛えることは出来る。

異文化のフレームワークを学ぶことも重要であるが、具体的な事例をもとにロールプレイのワークショップのミニ体験は納得感が高く高評価を頂いた。

(前編を見る)

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