布留川 勝の人材育成の現場日記

大阪G研報告(147回)前編 「40代からのキャリア開発」&投資効果を最大化する「企業向け海外研修」

2017/05/26

グローバル人材育成研究会(G研)

5月12日(金) 、大阪にて第147回グローバル人材育成会『「40代からのキャリア開発」&
投資効果を最大化する「企業向け海外研修」、その種類と要素とは?』
を開催した。

今回も多くの関西の企業ご担当者にお集まりいただき、改めて皆さんの積極的な参加姿勢と盛り上がりに感謝している。また皆さんからも「海外研修の全体像や課題が明確になった」や「ネットワーキングの機会としても有意義であった」とのお言葉を数多くいただけた。

第1部は『今更聞けない!「失敗しない海外研修」の選び方・組み立て方』として私より話をすすめさせていただいた。

今回研究会に参加された企業の皆さんの目的は、
海外研修制度はあり、全体像の確認やその見直しを検討中。が約60%
これから新たに、或いは制度復活に向けた情報収集の位置づけ。が約40%
その他数社、といった分布であった。

まず海外研修に携わるにあたり、知っておきたい下記5つのポイントについて説明した。
1.日本企業の海外研修の成功と失敗の歴史
2.多様化する海外研修、どんな種類があるのか?
3.『とにかく現地に送り込め発想』の弊害
4.『国内研修』『海外研修』という枠組みからくる思考停止
5.若手海外研修の全社的位置づけと課題 若手海外研修を成功のために必要な3ポイント

1980年代、企業の海外研修は欧米語学留学、MBA派遣とサバイバル研修などが活発に行われていたが、現在ではMBA派遣は激減、制度のみが残っているだけで何年も送っていないというような状況にある。
主な理由としては、高コスト、長期間、転職リスク、他参加者との社会人年数ミスマッチ(30代後半から40代をMBAに派遣してしまうケース)、などである。
一方2000年以降、Mini-MBA、エグゼクティブプログラム、客員研究員、新興国語学留学など、幾つかのプログラムがその目的やニーズに応じ開発され、派遣の見直しが進んでいる。

次に、多様化する海外研修をどのように選択すべきか?について皆さんと一緒に考えてみた。海外研修を検討する場合には、その検討要素として「目的」「講師の質」「教授法」「滞在方法」「価格」及び「治安」などが一般的だ。派遣先は欧米先進国新興国がある。

上記各要素については、それぞれ先進国と新興国に特長と違いがある。しかし、その目的である「Why(何を目的としているのか) 」の部分が重要であるのは言うまでもない。
一般的に、新興国は語学力底上げ、地域理解を目的とすることが多い。特に、現地で新興国のパワーを肌で感じることがポイントである。
一方、欧米先進国は、語学力だけではなく、リーダーシップ、ネットワーク、MBAフレームワークに関する学びを目的とするのが主流である。

続いてリーダー育成において外すことのできないMBA的プログラムの違いについて説明をさせていただいた。
【エグゼクティブエデュケーション(オープン&カスタム)、エグゼクティブMBA、MBA、ミニMBA】
対象者、期間、学位有無、企業派遣/個人参加、などそれぞれ各プログラムにも違いと特長がある。
日本企業のMBA派遣が著しく減少している理由でもあるが、現在の多くの日本企業にはエグゼクティブエデュケーション、ミニMBA、またはその組み合わせなどが企業ニーズに合致しているケースが多い。

皆さんの納得感が強かったものに、サバイバル研修などにおける「数パーセントの成功を一般化しすぎる」があった。これは時代にマッチしない古い経験則の発想が影響していると考えられる。
また今回のテーマでありながら恐縮だが、『国内研修』『海外研修』という枠組みだけで考えることは、本来の目的を見失うことに繋がることが多い。『海外研修』はあくまで手段であり、その目的を果たすために国内外の有益なプログラムを活用したり、考え方に柔軟性を持たせることが重要である。

また海外研修の投資効果を最大化するためには「1.人材育成」×「2.組織開発」×「3.採用 & リテンション」の面から考えることも必要だ。昨今多くの企業がこの 3つのポイントで投資を回収している。組織開発の側面とは、海外経験者を多く現場に入れることで周囲に影響を与え、内なるグローバル化を促すという意味である。
グローバル経験をして英語の継続学習へのモチベーションの上がった部下に対し上司が「英語より技術力だろ」と言うような不用意な言葉を投げかけ、せっかくの投資効果を下げてしまうような場面も多々ある。したがって、周囲(特に派遣者の上司)の視座も上げることマインドセットを変えることも欠かせない。もちろん、帰国後のフォローも重要であり、赴任に限らずグローバルに関わる仕事を創出したり、会社が求めるグローバル人材像(GL型人材*)を提示することも忘れてはならない。
(*Global&Local型:国内外問わず、また国籍・価値観・専門性・ジェンダーなどの異なるステークホルダーとの協働において、最高のパフォーマンスを常に発揮できる人材)

本来、海外研修の目的は英語力強化、異文化理解という狭い範囲のみで行うのではなく、リーダーシップパイプラインの各段階での取り組みと考えるべきであろう。
海外研修とは、将来のリーダー人材すなわち「GL型人材」を多く排出するためのプロセスであり仕組みだと考えるべきなのである。

第2部、後編につづく。

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