布留川 勝の人材育成の現場日記

G研報告(118回)若手社員のグローバル化を促進する『失敗しない海外研修』の選び方・作り方

2015/10/30

グローバル人材育成研究会(G研)

海外研修(若手・中堅)

若手・中堅向け研修

先日、第118回グローバル人材育成研究会
「若手社員のグローバル化を促進する『失敗しない海外研修』の選び方・作り方」を開催した。

■第1部■
私より、若手社員の海外研修を成功させるポイントとして、下記5つの内容をお話しした。

1.日本企業の海外研修の成功と失敗の歴史
2.多様化する海外研修、どんな種類があるのか?
3.『とにかく現地に送り込め発想』の弊害
4.『国内研修』『海外研修』という枠組みからくる思考停止
5.若手海外研修の全社的位置づけと課題若手海外研修を成功させるために必要な3ポイント

特に今回ご参加いただいた皆さんが興味を示していたのは、
5.の「若手海外研修の全社的位置づけと課題若手海外研修を成功させるために必要な3ポイント」である。

若手海外研修を成功させるためには、「1.人材育成」×「2.組織開発」×「3.採用 & リテンション」が、非常に重要なキーワードとなる。よくあるケースとして帰国後、若手社員が上司や周囲の「君は技術者なんだから英語なんかより技術を磨きなさい」のような不用意な発言でモチベーションを下げてしまいせっかくの人材投資に水を差す形になってしまうことだ。

若手だけではなく上司の視座を上げることとマインドセットを変えることは若手の人材育成に投資する際留意すべきことである。要するに組織開発としてのアプローチが必要で、中堅社員以上にも「なぜグローバル人材が必要か?何のための人材投資か?若手だけがグローバルを求められるのではない」という長期的かつ経営者的視点を持ってもらう機会の提供を行うことが人材投資のROIを上げることになるのである。

そして帰国後、海外研修を継続的に成功に導くために会社としてすべきことは2つある。
・キャリアパスの中に赴任という選択肢のみならず、何らかの形でグローバルに関わる仕事を作り出すこと
・会社が求める人材像として「GL型人材」を提示すること

GL(Global&Local)型人材とは、「国内外を問わず、また、国籍・価値観・専門性・ジェンダーなどの異なるステークホルダーとの協働において、最高のパフォーマンスを常に発揮できる人材」とことを指す。そして、もちろんこれらをフォローするワークショップの提供は必須となる。

若手海外研修の目的は英語力強化、異文化理解という狭い範囲のみで行うのではなく、リーダーシップパイプラインの初期段階の位置づけとする。将来のリーダー人材すなわち「GL型人材」を多く排出するための仕組みだと考えるべきなのである。

■第2部■
日本電気株式会社 人事部シニアエキスパートの籔本潤様よりご自身の海外赴任での実体験も踏まえて、「若手社員」の海外派遣の背景と目的、また具体的な派遣者の事例をご紹介いただいた。

日本電気株式会社様では、入社間もない社員を、事前研修を経て海外拠点に派遣、キャリアの初期段階でのグローバルマインド醸成とグローバル基礎力獲得を図っておられる。今後の海外事業の拡大を見据え、海外事業要員の質・量の確保、および従業員の意識変革が急務であり、そのための施策のひとつとして、本社の習慣やしがらみにとらわれにくい若手社員に、できるだけ早期に海外での業務経験を積ませ、「内なる企業変革」を起こす中核要員になってもらうことがこのプログラムの意図である。

当社も立ち上げ当初から、このプログラムの事前研修のパートをサポートさせていただいており、半年間でグローバル人材に必要なマインドやスキルを強化するためのプレゼンテーション、ネゴシエーション、Eメールライティング、ケーススタディなどを実施している。

籔本様が当日言っておられた、「このプログラムを今後も継続していく上で、『大切にしなければならない3つのポイント』は、印象的であった。

「1.基礎力をつけるため、という目的を忘れないこと」
「2.研修生個人またチームとしての高いモチベーションを強化すること」
「3.海外現地法人と本社が一緒になって若手を育てていくこと」

籔本様ご自身も海外赴任をされており、その際に非常に苦労されたご経験があり、「もっと早くにこのグローバルで活躍するための「基礎力」を知っていたら、赴任後の数ヶ月を無駄にせず、初日から力を発揮することが出来たはず」、と言っておられた。これは事前研修を十分にせず、海外赴任となってしまった多くの方が口を揃えて言われることである。

海外派遣を成功に導くには、会社として、そして人事部としてプログラムに対する熱い想い、細かな派遣者へのケア、プログラム・マネジメント、そして派遣後のフォローがどれだけ重要であるか、今回薮本様のお話しをお伺いし、を再認識した。

■第3部■
当社エグゼクティブ・ディレクターの福田よりフィリピンでの「ミッション遂行型プログラム」の詳細を事例を交えてお話しした。

この研修は、現地企業から実課題が与えられ、フィールド調査・分析を日本人とフィリピン人の合同チームで行い、英語で解決・提案するという内容だ。英語への苦手意識を払拭し、どんな環境でも与えられた任務を遂行し、行動力、発言力、異文化対応力を養う。

当日は、NECエンジニアリング株式会社 人事総務部 山角真二様よりこの研修を通して、以前は英語で話すことに自信がなかった受講者が、現地での実課題に取組み、本気でチームメンバーと意見をぶつけ合うことでマインドセット及び英語力がどのように強化されたかを発表いただいた。

NECエンジニアリング様からこの「ミッション遂行型研修」を受講いただいた14名は、ほぼ全員が海外渡航経験が少なく、英語を話すことに抵抗及び、苦手意識があった方ばかりであった。「なんとか、言葉をつなぎながらコミュニケーションが出来るようになってもらいたい」、また、「流暢な英語でなくても海外で自分にも仕事が出来るんだ」というマインドを醸成させたいという想いから、この研修は企画されている。

帰国後のアンケート結果では、話すことに抵抗がなくなった方、また、意識が変わった方が8割と、つたない英語でも気持ちを込めて説明すると相手にはしっかり伝わるんだと、大きな自信に繋がったようだ。

今回、先進国・新興国と様々なプログラムをご紹介したが、海外研修の企画・運営・実施する上で不安や悩みは多くあると思う。若手社員の海外研修を成功させるためには、繰り返しとなるが、「1.人材育成」×「2.組織開発」×「3.採用 & リテンション」を念頭に置きながら、やはりしっかりと「目的」を明確にした上で派遣先、プログラム内容を選ぶことが重要である。そのためには詳細な情報収集と緻密なプログラム開発力が必須である。今回は、現場を知る皆様と有効なディスカッションができ非常に充実した一日であった。

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